こども嫌いでしたが、こどもに関わる会社始めました。

中国で子供向けエンターテイメントコンテンツを提供する会社をやっています。

交渉という技術。その2:自分のルール、相手のルール。

昨日から引き続き交渉の話です。

交渉という技術。その1:あなたは何故ぼられるのか? - こども嫌いでしたが、こどもに関わる会社始めました。

 

日本にはチップという習慣がないので、海外旅行で戸惑ったという話はよく聞きます。それが賄賂になると一点、社会派や犯罪の匂いを帯びて絶対にいけないこととなります。それではその区別は何処にあるのでしょうか?

賄賂:権力者に対し、職権を用いて便宜をはかってもらうために渡す、お金や高価な物品のこと。又はその行為。(はてなキーワード)

チップ:感謝の気持ちを現金で表すもの。(はてなキーワード)

 その他、ネットで見てみると法に触れるものは賄賂、結果に対して払うものがチップ、結果を期待して払うのが賄賂などいろいろな意見がありました。それでは事前に払う旅館での“心付け”は賄賂に当たるのかなどの記事もあり、それ程までに日本人は賄賂に対して罪悪感を持っているということの証明だと思います。

 

しかし、場所が変わればルールは変わるものです。自分のルールが運よく多数派の場合は良いのですが、日本は少数派であることが多いので、国を出たらその場合慣れないルールの下で勝負をしなければなりません。

今では大分マシになったとは言え、中国では今も賄賂は横行しています。横行というよりは生活に密着していて、チップと賄賂と心付けを明確に分けて説明出来る人はいないのではないかと思います。

 

ある日系企業のイベントで、会場への心付けを支払っておらず嫌がらせをされて内容を縮小したことがありました。心付けの要求は当然面と向かって要求される訳ではありません。何気ない言葉の端々に濁してヒントだけチラつかされるだけです。嫌がらせも実際の理由や原因が説明されることは有りません。その時の嫌がらせは、「安全上の理由」ということで次々に改善要求を出されるというものでしたが、日本側は真面目に一つ一つそれに従い、改善するとまた次のお題が出され、仕舞いには「釘一本、ガムテープに至るまで全ての材料の品質証明書を提出するまで会場は使用禁止」という内容になり、結局会場の一部が使用禁止になってしまいました。それら全ては心付けを求めるヒントだったのですがその会社は最後まで気付かず、「そういう規則を先に提示しないなんて非常識だ」や「やはり日本企業は嫌がらせをされる」と会場に対して怒ったまま終わりました。

 

会場側も非常識は百も承知な訳です。日本に対する嫌がらせどころか、普段こんなに分かりやすいヒントを出してくれることはないので、私は意外に優しいと感じた程です。後日、同じ会場で別の日系企業のイベントが行われましたが、その時はスタッフの休憩室まで用意され、会場の協力もあり大成功しました。具体的に何をしたのかは知りませんが、その会社の担当者は海外での長い経験から、「中国なんてまだ分かりやすい方だ。」と笑っていました。今この二つの会社名を挙げたなら、成功した会社は「買収」や「賄賂」として問題視され、失敗した方は「誠実」な会社と評価が上がるのでしょうか?

 

もし、失敗した方の会社がその原因も分かった上で、「イベントの成功よりも自身の道徳観念を優先する」と決断しこの行動を取っていたなら、勝負に負けた訳ではなく自ら選んだ結果です。ただ、意味が分からぬまま望まない結果となり、その原因を相手に求めても、それはただ敗者の弁どころか試合にすら参加出来ていなかったように見えます。

 

心付けをいつどんな方法でどのくらい渡すのか?渡すからには最大限効果的に利用する方法を考える、場所によってはそれもまた一つの交渉技術です。そこに生まれる良心の呵責から逃げられない人は、日本から出ないか、日本と限りなく似たルールの場所を探すか、又は自分のルールに相手を引き込んで勝負出来るほどの力をつけるかしかありません。人の家に上がりこんでその家をだらしないと責めても、「じゃあ帰れ」と言われて終わりでしょう。

 

日本の潔癖さは良く知られています。日本の政治家の贈収賄の額に、中国人は半ば信じられないと言った顔で驚きます。もちろん少なすぎるからです。その潔癖さはある場面では誠実さとして尊敬され、信用となるでしょう。しかし場面によっては、違う結果になるということ、それを知った上で尚積極的な選択をした時に初めて“誠実”と言えるのではないでしょうか?ルールの違う場所でポリシーを貫き通すには、それに変わる力が必要なのです。自分の考えを変える訳ではなく、何処までが本質なのか優先順位をつけることが必要なのではと思います。

「誠実であること」=「何があっても100円単位でお金への潔癖を突き通すこと」ではないと思っています。